既存塗膜の剥離方法

はじめに

集合住宅(マンション等)の改修工事が増え始め「リフォーム」「リニューアル」という言葉が使われだしたのが昭和50年代のこと,それから既に30 年近くが経過しており,2回目,3回目の改修を迎える物件も珍しくありません。それら築年数が経過した建物で行われる複数回目の改修工事では,周知の通り再塗装時の既存塗膜の状態が非常に重要なファクターとなります。今後こうした塗り重ね塗膜の改修物件が更に増加することは間違いなく,既存塗膜に対する適切な調査診断と,その調査結果に基づき適切な改修仕様を作成することが要求されることとなります。

既存塗膜の剥離目的

再塗装とは,建物の躯体表面の美観を単に回復(化粧直し)するだけでなく,躯体自身を保護する目的で行われます。したがって,再塗装そのものが確実にその責務を果たせるかどうかがポイントになります。たとえば,既存塗膜の上に新塗材を施工しても,下部の既存塗膜層が脆弱であればその責務は果たされず,何の意味もありません。理想的には,既存塗膜を完全に除去して再塗装を行うのが最良ですが,工期面,費用面等々から,活性状態にある塗膜を除去する必要はないという考え方もあります。いずれにしても,既存の脆弱塗膜を除去することは不可欠であり,それが重要であるということです。

既存塗膜の調査

既存塗膜を調査する方法としては,引張試験,打診検査,赤外線確認などがありますが,一般的には,塗膜の活性度合が数値で判断できるため信頼性も高い引張試験が多用されています。また,引張試験の良い点は,塗膜界面の確認は勿論のこと,塗膜内部に脆弱(劣化)部があった場合に破断面の位置を判断することができることです。この引張試験による付着強度についてオーソライズされた規定値はありませんが,通常,5~7kg/cm2(0.5~0.7N/mm2)を保てば活膜(活性状態)とされています。
(参考までに,塗膜より重量のある磁器タイルの強度はkg/cm2(0.4N/mm2)とされています)

表1.塗膜剥離工法の種類と特徴
種  類 特  徴
高圧洗浄工法 高圧洗浄(冷水)
・高圧洗浄エネルギーのみによるケレン工法
・下地の損傷が懸念される
温水高圧洗浄(温水)
・有機塗膜には効果的である(有機物は全て熱に反応する)
・下地への損傷も弱まり,除去能力も高まる
洗浄+軟化剤併用
・施工性は非常に高まるが,養生,飛散が問題となる
・ケレン後下地は荒れることなく良好
・冷水はゲル状となるため,温水に限定
ウェットブラスト
・ケイ砂,重曹などメディアの飛散と回収が困難
・粉塵はないが,ドライブラストより非効率
超音波ケレン工法 ・騒音がなく,サンダーより粉塵は少ない
・ケレン後,下地が波状になることが多い
・脆弱部分の判断は不可能
・ケレン後の洗浄が必要
・小面積に適する
剥離剤工法 ・スクレーパーによる手作業のため非効率
・養生,臭いなど,作業環境が問題
・小面積に適する
サンダーケレン工法 ・騒音と粉塵で最悪となる
ドライブラスト工法 ・機材が大掛かりとなる
・騒音がかなり大きい
・マンションには非現実的である

再塗装前の既存塗膜の下地処理

再塗装前の下地処理は,既存塗膜の状況及び除去する程度によって一般的に次の3グレードに分けられます。

a. 洗浄

既存塗膜を調査の結果,塗膜強度に問題がないと判断した場合は,高圧洗浄によって塗膜表面のチョーキング(粉化)及び汚れを除去し,新塗材との密着性を強化する。

b. 準ケレン

既存塗膜を調査の結果,ほとんどが活性状態と判断されるが,部分的に脆弱部(劣化部)があると判断された場合は,活膜は除去しないで脆弱部(劣化部)を除去する。

c. 全ケレン(剥離)

既存塗膜を全面的に除去する方法。既存塗膜が脆弱(劣化)状態にあると判断された場合は勿論のこと,塗装面を磁器タイルなどに変更する場合にも全ケレンが必要である。

各種剥離工法のメリット・デメリット

既存塗膜を処理する場合に用いられる各種剥離工法について,工法ごとの種類と特徴,問題点,開放廊下タイプの集合住宅への適用性を表1(前頁),2,3にまとめましたのでご参照下さい。
((株)アシレ 営業部長)

 

各種剥離工法のメリット・デメリット
既存塗膜を処理する場合に用いられる各種剥離工法について,工法ごとの種類と特徴,問題点,開放廊下タイプの集合住宅への適用性を表1(前頁),2,3にまとめましたのでご参照下さい。
((株)アシレ 営業部長)

 

高圧洗浄による外壁塗膜ケレン 温水高圧洗浄によるバルコニー天井ケレン
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圧力:45Mpa 水量:30L/min
温度:常温 ノズル:扇形15度
圧力:45Mpa 水量:30L/min
温度:80度 ノズル:扇形15度
超音波ケレン
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表2.塗膜剥離における諸問題
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表3.開放廊下タイプ集合住宅の場合の剥離工法適用性
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執筆者 技術委員会塗膜剥離分科会・田所康弘
転載元情報
MARTA第4号 2006.4