会長挨拶
バブル景気が絶好調だった1987年(昭和62年)にJIA日本建築家協会関東甲信越支部のメンテナンス部会が発足します。スクラップ&ビルドでポストモダン建築が持て囃されていた時代に既存のマンションをコツコツと修繕していく希少な建築家の集まりでした。他の人が設計した建物を修繕するなど建築家の仕事ではないと蔑まされていたほどです。ところが市民のためのマンション修繕セミナーなどを企画するとマンション管理組合から人気を博し会場は大いに賑わいました。マンション大規模修繕工事を施工する専門工事会社や材料を提供するメーカーも参加してメンテナンス部会の中にリフォーム技術研究会をつくって活動を広げていきます。JIA会員でなくてもリフォーム技術研究会にどんどん受け入れて存在感が大きくなるとJIA本部からも小言が聞こえてきました。
そこで2003年(平成15年)にリフォーム技術研究会はJIAから飛び出してmartaマンションリフォーム技術協会は誕生します。マンション大規模修繕工事にかかわる設計者と施工者とメーカーが三位一体となって修繕や改修の技術を本格的に研鑽していくことになったわけです。さっそく国土交通省国土技術政策総合研究所から「改修によるマンションの再生手法に関するマニュアル」を作成する協力が依頼されて2004年(平成16年)に公表されるとともに「管理組合・実務家のための改修によるマンション再生マニュアル」を編纂して出版されました。それをテキストにしてセミナーを展開して、さらに「マンション改修の手引き」や「よくわかる耐震改修」「超高層マンション改修の手引き」「マンション改修見積」「制度の限界」「マンション耐久性向上の手引き」「マンション住戸内設備改修」「マンション修繕工事施工実践マニュアル」(上巻)(下巻)「マンション修繕工事施工実践マニュアル」(ポケット版)などを出版してきました。2023年(令和5年)には20周年を迎えてふたたび国土交通省国土技術政策総合研究所から「改修によるマンションの再生手法に関するマニュアル」の改訂版編纂について協力を依頼されているところです。
これからはマンション大規模修繕工事の現場においても働き方改革が本格化していきます。ゆとりを持って高い品質を確保するためには生産性の向上が欠かせません。若い世代の方々の新しいアイデアや女性の視点から現場をやさしく見つめることも大事になってくるでしょう。調査診断から長期修繕計画、設計、工事、アフターメンテナンスと一貫したDX化も始まりつつあります。マンションリフォーム技術協会が率先してマンション大規模修繕工事の改革を推進できるように、設計者と施工者とメーカーが手を携えて邁進してまいります。